おじさん

大学サークル仲間による乱雑ブログ

小野不由美「屍鬼」

 タイトル通り吸血鬼が出てくる話。時代設定はちょっと前、自分たちの親の世代が若かったころだと思う。モミの木に囲まれた山奥の村に突然ある一家が引っ越してきて、それ以降村の中で事件が起こり始める・・・みたいなかんじ。といっても普通のホラー小説のような幽霊とか怪物とかが出てきたり、出てこなかったりして読者を怖がらせようとする話運びではなくて、人里から離れた集落の持つ雰囲気とか不気味さを吸血鬼を交えることによってより際立たせるような書き方をしてとてもよい。メインのストーリーもおもしろくて最初は人間側に感情移入しているのだけど、話が進むにつれて吸血鬼というものがただの物語の装置としての怪物というより、自分たちとは単に立場の違うもう一つの存在であるということが分かってきてそちらにも感情移入できるようになる。なかなか長いけど最初のほうを我慢して読めば中盤から一気に面白くなるので是非読んでほしい。

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